dream

□シェーン13
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──シェーンへ

この間は面白いレシピをありがとう。美味しく出来たらあなたに味見をお願いします。
お仕事はどうですか?忙しい?
牧場経営も軌道に乗ってきたところで今度はニワトリを飼い始めました。シェーンはニワトリの扱いがとても上手だとマーニーに聞いたので、良かったら色々教えてください。
最後に、私の大好きな綺麗なブルージャズが咲いたのであなたにもお裾分け。ジャズの甘い匂いにつられて蝶々がやってくるの。
また手紙を送ります────




同封された花束を手に持つシェーンは動揺していた。
(これ、って…花束?あの花束ってカウントしていいのか…?いや待てよ、ピエールの所で売られてるのとは違うよな…)
この町では花束を送ることが愛の告白とされているが、外の街からやってきた彼女はその意味を知らないだろう。
膨らんだ期待が萎んでいくのを感じてしまったが、それでもミカウがくれたブルージャズの花を大事そうに空き瓶の中へと差し込んだ。
彼女と体の関係を持った日から、もっと言えばその前からずっと恋焦がれていたことに気付いていたのに、あんな綺麗な娘が自分だけを好きになるわけがないとシェーンは諦めていた、はずだった。
(……言うだけ、言ってみるか)
自信はない
それでも、彼女の笑顔を独占したいという気持ちが勝ってしまったシェーンはベッドから立ち上がりピエール商店へ向かうことに決めた。













「やぁシェーン!またいつもの冷食かい?たまにはちゃんとしたの食べないと体に悪いよ?」
「よおピエール。今日は食いもんとかじゃねえんだ」
眼鏡の奥で不思議そうに目を見開くピエールへ近付き、買い物中の町人たちへ気付かれないように耳打ちをする
「実は………花束を」
「花束ぁ!?君がかい!?シェーンにも春がきたんだねぇ!」
「シーーーーーッ!!!」
驚愕の声をあげたピエールの口を塞ぎ睨みつけた時には商品を吟味していたルイスがこちらを見ていたが、どうやら肝心の内容は聞こえてなかったらしい。
"ご、ごめんよ"と小声で謝るピエールを解放し、シェーンは大袈裟に咳払いをして見せた
「ゴホン…、あのな、何も聞かずに花束を売ってほしいんだ」
「勿論!200ゴールド払ってくれれば素敵な花束を用意するよ。…で、誰に贈るんだい?」
「何も聞かずにって言ってるだろ…!」
耳まで赤らめたシェーンの顔を指差し、彼はケラケラと笑っている。全く悪意はないのだが、彼はは趣味が悪い。
「こんな小さい町だ、どうせすぐにバレるんだからさぁ」
ニヤニヤと薄ら笑いを浮かべながら肘で突いてくるピエールへ先程よりも小さな声で話す
「あの………引っ越してきたばっかりの」
「あぁ!テトさんかい?」
「違う!絶対に違う!!あんなじゃじゃ馬絶対にお断りだ!」
完全否定する声が数分前のピエールよりも大きなものとなってしまい、今度はビールを選んでいたパムにまで振り返られたが上手く誤魔化した
「………もう一人の方だ」
「もう一人……あぁ〜、ミカウさんだっけ?胸の大きい子だろ?」
いきなり身体的な特徴から挙げてきた彼はやはり、悪意がなくとも趣味が悪い。
シェーンはうんざりしたように数回頷いて、早くこの場から立ち去りたいという空気を醸し出す
「もういいだろ、早く花束を売ってくれりゃそれでいいんだ」
「あぁ、そうだそうだ。待っててくれよ!綺麗に作るからさ」
そう言ってピエールはフェアリーローズとポピーを使って可愛らしい花束を作ってくれた。
傷や汚れがつかないよう優しく紙袋へ入れたそれを渡された200ゴールドと交換する。
ただの買い物で嫌というほど疲れたシェーンは紙袋を受け取ったあと挨拶もそこそこにさっさと踵を返すのであった。










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